SHIKA☆TALK

管理人SHIKAによる読書記録&テレビ・映画の鑑賞記録です。

坂の上の雲

司馬遼太郎第2弾です。

近・現代史というのは、歴史好きの私にとっても非常に苦手とする分野でした。学校の授業でも、このあたりにくると時間が足りなくなっていることが多くて、だ~っと進んでいってしまっていたんですね。だから、はっきり言って明治時代以降にはほとんど興味をもっていませんでした。
そんな私の認識を改めさせてくれた偉大なる小説が、この「坂の上の雲」です。もとは父に「おもしろいから読んでみろ」と進められたのが発端だったのですが、読み始めてみたら即夢中になりました。
愛媛松山の幼馴染。彼らが主人公です。
正岡子規-明治時代屈指の俳人として、その名を知らぬ人はいないでしょう。
秋山好古-日露戦争で日本の騎兵集団を率いて、史上最強の騎兵と呼ばれたコサック師団をやぶった人物です。
秋山真之-好古の弟。日本海軍連合艦隊の参謀として、日本海海戦において東郷平八郎の行った作戦のほとんどを立てた人物です。
こう見るとこの時期の愛媛松山にはなんという人物が連続して輩出されたのだろうとそれだけでも驚きです。
戦争はいつの時代でも歓迎できるものではありません。秋山兄弟も最初は軍人になる気は毛頭なかった。生まれそのものも下士の子で、決して軍人としての将来が約束されていたものではなかった。しかし、時代が彼らを表舞台に引き上げていったのです。
明治維新以後、日本は急速に近代国家への道を歩み始めたわけだけど、その中で青雲の志を抱いて、懸命に生きた人々の姿がここには描かれています。
日本を近代国家にして、世界の大国に引けを取らぬようにしたい-この時代は不平等条約がまかり通っていて、かなり悔しい思いをしてきていた。だからこそ、政治に携わる人々はそれを何とかしたいという思いが、まず第一にきていました。
戦争は許されることではありません。けれども、日露戦争と太平洋戦争の違いを感じずにはいられませんでした。
幕末・明治で何かを成し遂げた人々はみなホントに力強く、魅力的です。
彼らのパワーの源が何であったのか、今一度考えるためにもこの本は格好の教材になると思います。オススメ~。
ただし、全8巻。なかなかに読みごたえがありまする。

新撰組関係本2冊

大河ドラマ『新撰組!』は終わりましたが、新撰組の扱った司馬遼太郎の本を2冊書いてみます。(これを書いたのは数年前なんですけどね。転用)
そもそも、敵扱いの多かった新撰組が見直されたばかりか、熱烈なファンまで呼ぶようになったのは、司馬遼太郎のこの2作の影響が大きかったという話なんですが・・・私もご多分に漏れず、です。

新撰組血風録
全部で15編の短編集です。
①油小路の決闘
新撰組に後から入隊した隊員である伊藤甲子太郎。才子である伊藤は新撰組のあり方に批判的で…。最終的な伊藤たちの悲劇を篠原泰之進の視点で描いています。
②芹沢鴨の暗殺
これは新撰組の話の中でもきわめて有名な話です。芹沢は新撰組を起こした人物の一人。この芹沢鴨が暗殺されるまでのところが描かれています。
③長州の間者
今更ですが、新撰組は幕府側の組織であるために、倒幕派にとっては非常に忌み嫌われていた存在でした。長州の間者として新撰組に入った深町新作という青年の話。
恋愛を絡め、妙に切ない話になっています。
④池田屋異聞
池田屋事件というのは新撰組を語る上で避けては通れない大事件でした。この事件によって、明治維新が数年遅れたと言われています。これはその池田屋事件のサイドストーリー。登場人物は山崎蒸です。
⑤鴨川銭取橋
これまた山崎蒸が登場。彼は監察になっています。監察の仕事は内外の諜報活動および隊士の風紀取締りです。でも、この話では土方さんの参謀というか、策士ぶりが光ってます。武田観流斎が討たれた時のお話。
⑥虎徹
刀にはすべて名前がついています。そして新撰組面々の刀にまつわるお話もいろいろありますが、これは近藤勇の愛刀についてのお話です。本物?偽物?このあたりのところがおもしろく描かれています。要は自分が何を気に入るか、ですよね。
⑦前髪の惣三郎
このお話は映画「ご法度」として公開されたので、知る人も多いのではないでしょうか?
私は見てないけど。衆道が扱われています。美男過ぎた加納惣三郎を取り合う隊士。
結果は、やっぱり悲劇でしょう。
⑧胡沙笛を吹く隊士
この笛は「昔アイヌがふいていたものだ」と当人が言っておりますが、尺八によく似た音色でもう少し複雑なものだそうです。当人―鹿内薫。これまた恋愛が絡んでいます。
これまた悲劇です。新撰組の中で徹し切れなかった人物の悲劇というべきか。
⑨三条磧乱刃
六番隊隊長井上源三郎の話。天然理心流の同門者に対する近藤・土方の思いがよくわかるお話。井上さんって、困った人だったかもしれない。
⑩海仙寺党異聞
会計方長坂小十郎が、ひょんなことから自分が最後を見届けた中倉主膳の仇討ちをすることになってしまったお話。
⑪沖田総司の恋
新撰組一番隊長の彼は新撰組の一番の人気ものでもあります。沖田と土方・近藤との結びつきは新撰組ファンのつぼですね。しかし、このお話での近藤・土方のおせっかいぶりは「おいおい」という感じ。
⑫槍は宝蔵院流
谷三十郎の息子が近藤勇の養子となったことにかかわってのお話。谷の新撰組の中での浮き沈みを描いています。しかし、近藤さん「板倉候ご落胤」に目がくらんだとはいえ、軽率だよな。
⑬弥兵衛奮迅
これまた間諜です。今度は薩摩。西郷に心酔している富山弥兵衛のお話。この弥兵衛さん、最初は土方さんにも気に入られていたツワモノ。新撰組を抜けても最後まで薩摩の間者として奔走しています。間諜として凄腕の持ち主でした。
⑭四斤山砲
大砲方大林兵庫のお話。鳥羽伏見の戦いでは薩摩の圧倒的な大砲の力になすすべもなかったのですが、その裏話。
⑮菊一文字
この刀は沖田総司の剣の腕と並んで語られることの多いものです。ご存知沖田の愛刀。この刀に対する沖田の態度というのが、このお話をすこぶる感動的なものにしています。15編のトリをつとめるのがなるほどと思わせる作品。

燃えよ剣
主人公は新撰組副長であった土方歳三。
武州石田村のバラガキのトシが新撰組副長となり、函館で死んでいくまでのお話。
これを読んだその日から、貴方も必ず歳三ファンと言えるほど、この中での土方さんは魅力的です。そして、それとともに沖田総司とのやりとりが、もぅたまらんという感じ。
新撰組は時代の徒花とも言われますが、その中で力の限り生き抜いた土方歳三。新撰組の中で一番苛烈な人生を送ったのは彼ではないでしょうか?
この小説の中でぜひ読んでほしいのは、烏合の衆をまとめるための術や新撰組がなくなり、仲間と袂を分かってからの土方さんの姿です。特に東北から函館までを転戦している時の姿が最高に好きです。
馬上で銃弾に倒れたという最期も、いかにも彼らしいと思いました。
明治政府が評価される中で、その敵であった新撰組は、そしてその新撰組の参謀格としてすべての活動を掌握していた土方歳三は長く憎まれ役でした。
しかし、この小説で土方さんの評価が一変したそうです。
一生懸命で、かつ不器用な土方歳三の生き様をぜひ読んでほしいです。

私の一番好きな本かもしれないな、これが。
10年以上前のことなんだけど、寝る間を惜しんで読んだ時の思いが、今でも湧き上がってくるのですからね。

青の炎

若さが悲しい・・・こんな思いで涙が止まらなかったラストです。
この小説はいわゆる倒叙推理小説です。だから、最初から犯人もその犯行方法もすべて読者はわかっている。
推理小説は推理することに楽しみがあるという方には、だからこの手の推理小説は向かないかもしれません。でも、犯行に至る、また、犯行後の心の動き、犯人の心情という部分を読みたいと思われる方にはうってつけの小説ではないでしょうか?

主人公櫛森秀一は由比ガ浜高校の2年生。頭が切れて、でも勉強一本槍というわけでもない。その毒舌っぷりはなかなかにユニークな、魅力的な人物です。
そんな彼が殺人を犯したのはなぜか?

どんな理由があろうと人を殺してはいけない。人を殺した人間はそれに相当する罰を受ける。これは当たり前のことです。このルールが守られなければ、秩序ある社会など保たれるわけないのだから。
でも・・・でも、どうしても殺すしかなかったという切羽詰った思い、これは確かにあるでしょう。―そこに描かれる人間模様に惹かれて、私は推理小説を読み続けているのですが―この櫛森秀一少年の動機というのは、まさにそれだった。
自分のために―という部分ももちろんあったでしょう。でも、彼の行動の背景にあったのは常に『母と妹』の存在でした。ゆえに悲しいラストが待っていたともいえるのですが。

櫛森秀一は、ホントに頭がいい。冷静で度胸もある。しかし、やっぱり子どもなんですよね。必死すぎて・・・。彼は『自分が母や妹を守らなければ・・・』という思いに捕らわれている。これは当然のことなんでしょうが、だから待つことができなかった。そして、深く相談できる大人がいなかった。弁護士さんに頼っても、真の意味での救いにはならないわけだし。
何よりも彼は『自分で解決できる』と思い込んでしまっていた。そこが『悲しすぎる若さ』なんですよね。
確かに完全犯罪に近いものを考え出すことができた。そして実行して成功した。
それは、ほんのちょっとの偶然から、全てが無に帰してしまうことになったけど、それでも彼が考えたことはかなり完成度の高いものだったことはまちがいない。
でも犯罪が成功しても、彼の待ち望んでいたような平穏な心を取り戻すことはできなかったのです。それはことをなす前には考えても見なかった『罪の意識』のせい。彼は自分で自分を壊し始めてたようにも思います。
この殺人を犯してからの櫛森秀一の心情表現にはぐいぐい引き込まれていきます。
そして切なくなっていきます。

もう少し待つことができれば―
もっと親身になって相談できる大人がそばにいれば―
何より、母や妹を守ると考えずに、共に生き抜く道を一緒に考えていこうという姿勢を取れれば―

全ては切れすぎる頭脳をもっていたがため、このような方法をとる前に自分の力だけで動けてしまった秀一の不幸だと思うのです。

その秀一をひたすら見守る少女、紀子。彼女はどんな思いを抱えてこれから生きていくのでしょうか?こんな鮮やかな少年の姿を忘れることは絶対できっこないから。

とにかく読んで損はない感動作です。
これまた、ラストまで一気に行きたくて寝る暇を惜しんだ本ですね。-よくあることだけど(^。^)

この作品は映画化もされました。・・・見てないけど。
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