R/EOLUTIONシリーズ第2弾。
主人公はカンボジア難民であるキュー・ティット。通称“鳩”。鳩がキューとも呼べるところから、この名を使っているのだが、5歳かそこらで、カンボジアのプノンペンにあったS21尋問センターにおいて収容者番号VS-1002という境遇となり、処刑当日移動のトラックから飛び降りたことで生き延びることができたという、これまた苛酷な過去をもった男である。
その後、とある男に助けられ、ともにカンボジアから命がけで脱出した鳩は、貨物船に助けられた後、30過ぎの現在まで日本で生きてきた。しかし、日本はカンボジア難民である彼にとって、生きやすい場所ではなかった。
鳩を助けてくれた男は、日本人女性と結婚して井口という日本姓を得、大久保に自分の店を構えて慎ましく生きている。カンボジア以降ずっと鳩の親代わりとなっている井口にとって、新宿の裏社会の底辺でその日暮らしをしている鳩が歯痒くて仕方がない。
一方鳩は、生まれた国は地獄のような状態で、すべてを我慢し、耐え、そのあげく理不尽な殺され方をするところだった。しかし、その地獄から抜け出すべく辿り着いた日本でも、カンボジア難民であるということでいわれなき迫害を受けてきた。そんなこともあってか、時には夜も眠れぬほどの苛立ちに自分自身が圧迫されそうな思いを抱いている。
「カンボジア難民の中にも、立派な生き方をしている人は大勢いる。要するに、俺には忍耐力ってものが足りなかったのさ」という鳩。彼の鬱屈の原因は、自分たちはいつまで我慢し、耐え続けなければならないのだろうか-という怒りにも似たものなのであろう。

そんな鳩だったが、ひょんなことから一人の少年“すみれ”と出会う。そして、時を同じくして起こったある騒動に深くかかわるうちに、その運命を大きく転換させることとなった。

さて、このお話の主人公“鳩”。私は正直言って、彼にはほとんど感情移入できませんでした。鳩がすみれと接する時間が多いだけに、その差が歯痒くて-。まぁ、逆にいえば、それだけすみれが鮮やかだったんだけど。
はい、そのすみれちゃん。彼は満を持して登場!というところでしょうか。鉱物シリーズの第1弾「プラチナ・ビーズ」において、冒頭でサーシャが拾ったあの子どもがこんなに元気になりました♪
が、この話でのすみれは、こんな風に軽く語れないほどの存在感です。
サーシャによって住むところを与えられ、勉強し、着実に「生き抜く」ためのすべを身につけていっているすみれ。若干12、3歳というところなのに、彼は鳩に大きな影響を与えます。
ラストシーンですみれは鳩に言います。
「春になったら、この街に嵐を起こそうよ。この街に、今までなかったような強い風を吹かせるんだ。---ぼくらの嵐をね」
このすみれの言葉に鳩は捕まってしまった自分に気づきます。すみれに囚われたのだと-。
こうして、同志がまた一人増えたのでした。

五條作品のプロローグとエピローグは秀逸だと常に思ってるんですが、この話もそうですね。プロローグでこの作品群の意図する『革命』がどういうものか、おぼろげながら見えてきました(このプロローグはラストシーンそのものなのですが)。
でもってプロローグ!これは小説推理連載時にはなかったものです。が、井口の鳩への愛情を思うと「そうだったの!」と。彼らの出会いを「そんな偶然」と一笑するか、「それが運命だったんだ」と思うかでは受け止め方はちがうでしょうが。

最後におまけ(これが本題だったりして(^0^))
この小説は他作品の胸にジーンと来て号泣-っていうシーンは少ないんですが、かわりに楽しめるのが、すみれの可愛さ・賢さ&亮司の可愛さ(って言ってしまおう)&サーシャ様(様付けだよ)。
この3人の姿にもうめろんめろんですよ。
すみれの可愛さなんて、もうちっちゃいもの好きにとってはたまりません。ベッドの上で正座して、子ども用図鑑見たり、アンリ・ルソーの画集を声に出して読んだりしている姿は抱きしめたいほど可愛いです。
無条件にサーシャを慕う姿も{{(*^0^*)}} なのに、鳩をして「頼りになる相棒」扱いされるほど、思慮分別のある行動をとるし。この小説ですみれ株花丸急上昇なこと、間違いなし!
そして、亮司。断鎖でサーシャに捕まった亮司は、断鎖~紫嵐の間にサーシャと同居していたというオフィシャル設定があるそうですが、それが銀座の画廊なのね~。サーシャにすっかり捕えられてしまった亮司は、自分たちが思うほどサーシャは自分たちを必要としていないことが歯痒くて仕方がないようです。だって、サーシャとのシーンなんて拗ねまくりで、すみれより子どもに見えるくらいなんだもんね。
しかし、自分自身についてはすっかりふっきれたようで、「何不自由なく育ったおぼっちゃん」と鳩の目には見えています。実際そうなんだけど、1回は底辺を這いまわるような生活をしていた彼をここまで変えたサーシャってやっぱすごいわと改めて感心。いや、サーシャが変えたとはどこにも書いてないけど、そうとしか思えないのは、断鎖を読んだ方ならば納得でしょう。
そして、サーシャ。ど~してそういろんなこと知ってるの?一体、あなたはどこで何をやってるの?と相変わらず謎の多いお人ですが、その存在感には相変わらずやられます。この人には分からないことはないんじゃなかろうか?と思わせてくれます。

サーシャが起こそうとしている革命は「方法は変わった。しかし精神は変わらない」ものなのでしょう。

現在、3rd mission「心洞<Open Sesami>」が連載中です。時期は紫嵐から半年後ぐらいなのかな?ここでは5回まで来てますが、すみれが相変わらず素敵です。いまだ出てこないサーシャや亮司がどんな風に登場してくれるのかが、目下の楽しみなんですが、いつ出てくるんだろう?