なるほど、過去最大、『館』シリーズの集大成だけはあるな-というのが読後の率直な感想でした。

館シリーズ第1作『十角館の殺人』が発行されたのが、もう20年も前になるというのにびっくり。この本が出た時に「おもしろそうだな」と思って購入し、すっかりその独特な世界にはまり、以降次々と敢行される『館』シリーズは発売と同時に読みふけっておりました。
思えば、それまで海外のミステリを専門に読んでいた私が、日本のミステリに目を向けるきっかけになったのが、この『館』シリーズであると言っても過言ではないでしょう。

1987年十角館の殺人
1988年水車館の殺人
1988年迷路館の殺人
1989年人形館の殺人
1991年時計館の殺人(日本推理作家協会賞受賞作)
1992年黒猫館の殺人

そして、12年の年月を経て出された『暗黒館の殺人』-そうか12年も間が開いてたんだ・・・。


さて『暗黒館の殺人』・・・この話の最大のおもしろさは、いい意味での『予想を裏切る展開』です。
館とそこに住む人々、そして起こる事件について、いろいろな謎が出されるんですが、我々読者もその謎について読みながらなんとなく推理していくわけですよね。
ところがその推理がことごとく見事に外れていくわけです。素人だから当たり前だ、なんて言われるとみもふたもないのですが・・・、しかし読者がそう推理してくるだろうな、と予想して書いているだろうと思わずにはいられませんでした。
そして、私が「こうじゃないかな」と予想していることをそのまま語ってくれる登場人物(中也)には妙に肩入れしてしまうのでした(この中也なる人物・・・その設定にはホント唸りましたね)。
中也の推理に対し、この館の息子玄児が真実を明かしていく・・・。
事件については、二人が探偵役のような形になっていたのですが、館やそこに住む人々の秘密については玄児はすべて知っていたわけですから。

最終的に謎は明かされるのですが、最大の謎は実は事件そのものではない部分にあったというところが実におもしろかったです。
この謎については、あちらこちらに伏線はいっぱいあったのですが、なんとなく変だなと思いつつも読み飛ばしていたのですよね。


ものすごく分厚い本がさらに上下巻になっているのですが、これは一気に読みたくなる本です。下巻なんか1日がかりで読んじゃいましたよ。

また、以前読んだ館シリーズを読み返したくなりましたね。