前作ですっかりこのシリーズにはまり込んだ私は、寝る間を惜しんで(惜しむな!)次作を読みま
した。このシリーズははまる人はとことんはまるだろうと何かに書いてあったのですが、全くその通りでした。この本は第3回大藪春彦賞を受賞しております。
さて、スリー・アゲーツ―今回は前回のように作戦名ではありません。ただ、サブタイトル「三つの瑪瑙」というように、やはりこのアゲーツがこの話の中で非常に重要な意味をもって登場します。
瑪瑙の赤は―家長の流す血の色。赤と黄色と白の3つの瑪瑙。さほど高価でもない、この半貴石は一人の男の生きる意味でした。
では、ここからはあらすじに近い内容にもなるので、文体を変えて…
今回葉山が分析したのは、とある人物の書き残した書類ともいえないようなものだった。その人物―チョン―は北朝鮮の国家保安部の工作員であり、長年スーパーK(北朝鮮製の偽ドル札)工作に関わっていた。チョンをソウルで捕らえようとしたアメリカ・韓国の情報部は壮絶な銃撃戦を行ったあげく、まんまと取り逃がしてしまう。日本に潜伏しているらしいチョンをアメリカ・韓国両方の情報部が追う。ところが、偽札による汚染は確かに深刻な問題だが、アメリカ・韓国双方とも単にスーパーK問題を追っているだけとはとても思えない動きをしている。何かもっと大きな問題が発生しているらしい。そう疑問を感じ始めた葉山は、紙くず同然だと思っていた書類から、チョンの家族を見つける。そして彼女たちとの接触の中から、チョンに対する思いは複雑に変化していって…。
日本各地で見つかる精巧な偽札―明らかにチョンのしわざだが、彼はそれを隠す気配もない。
その背後で進められる恐るべき陰謀。チョンは何をしようとしたのか?
このチョンという工作員の思いが今回の話のメインテーマになっています。北朝鮮と日本に二つの家族を持つチョン。今回の日本での任務が工作員としての最後の任務になるであろうことを自覚したチョンは一体何を決意したのか?
全編に渡って流れる「家族」に対する深い思いが、涙を誘わずにはいられません。
自分の子どもには幸せになってほしい―この思いが狂おしいほど高まるのも、そうできない現状をいやというほど知っているから。
望みさえすれば、そして努力さえすれば、何でも手に入れることができる国に住んでいると、それがどれだけ尊いものであるのかということは考えたことすらないわけです。
プラチナ・ビーズでは北朝鮮の最下層の人々の姿を描いていたのですが、スリー・アゲーツで描かれているのは、上層階級に属するだろう人の姿です。ある程度裕福でありながらも、逆らえない運命が待ち受けているのならば、そこにあるのは幸せではない―。
このシリーズを読んでいて、北朝鮮という国はとんでもないところだ―こういう感想はなぜか抱きません。思うのは、この国のシステムについてのみ。そしてそれ以上に「家族のために」命がけになる人々の姿に圧倒されます。
―瑪瑙の黄色と白色は家長への尊敬と信頼と愛。
今回の葉山は前回以上にアナリストとしての力を発揮しています。しかし、それでも彼の望んだように事態を収拾することはできませんでした。前回同様、失敗だったといえる結果にそれでもただへこたれていることは―チョンが許さなかった。
葉山もたくさんのたんこぶを作りながらも、確実に成長を遂げています。
シリーズ次回作は「パーフェクト・クォーツ」。しかし、残念ながらまだ出ておりません。
ゆえに、次は番外編「夢の中の魚」にチャレンジです。
おまけ:今回はサーシャは全く出ておりません(T_T)
した。このシリーズははまる人はとことんはまるだろうと何かに書いてあったのですが、全くその通りでした。この本は第3回大藪春彦賞を受賞しております。
さて、スリー・アゲーツ―今回は前回のように作戦名ではありません。ただ、サブタイトル「三つの瑪瑙」というように、やはりこのアゲーツがこの話の中で非常に重要な意味をもって登場します。
瑪瑙の赤は―家長の流す血の色。赤と黄色と白の3つの瑪瑙。さほど高価でもない、この半貴石は一人の男の生きる意味でした。
では、ここからはあらすじに近い内容にもなるので、文体を変えて…
今回葉山が分析したのは、とある人物の書き残した書類ともいえないようなものだった。その人物―チョン―は北朝鮮の国家保安部の工作員であり、長年スーパーK(北朝鮮製の偽ドル札)工作に関わっていた。チョンをソウルで捕らえようとしたアメリカ・韓国の情報部は壮絶な銃撃戦を行ったあげく、まんまと取り逃がしてしまう。日本に潜伏しているらしいチョンをアメリカ・韓国両方の情報部が追う。ところが、偽札による汚染は確かに深刻な問題だが、アメリカ・韓国双方とも単にスーパーK問題を追っているだけとはとても思えない動きをしている。何かもっと大きな問題が発生しているらしい。そう疑問を感じ始めた葉山は、紙くず同然だと思っていた書類から、チョンの家族を見つける。そして彼女たちとの接触の中から、チョンに対する思いは複雑に変化していって…。
日本各地で見つかる精巧な偽札―明らかにチョンのしわざだが、彼はそれを隠す気配もない。
その背後で進められる恐るべき陰謀。チョンは何をしようとしたのか?
このチョンという工作員の思いが今回の話のメインテーマになっています。北朝鮮と日本に二つの家族を持つチョン。今回の日本での任務が工作員としての最後の任務になるであろうことを自覚したチョンは一体何を決意したのか?
全編に渡って流れる「家族」に対する深い思いが、涙を誘わずにはいられません。
自分の子どもには幸せになってほしい―この思いが狂おしいほど高まるのも、そうできない現状をいやというほど知っているから。
望みさえすれば、そして努力さえすれば、何でも手に入れることができる国に住んでいると、それがどれだけ尊いものであるのかということは考えたことすらないわけです。
プラチナ・ビーズでは北朝鮮の最下層の人々の姿を描いていたのですが、スリー・アゲーツで描かれているのは、上層階級に属するだろう人の姿です。ある程度裕福でありながらも、逆らえない運命が待ち受けているのならば、そこにあるのは幸せではない―。
このシリーズを読んでいて、北朝鮮という国はとんでもないところだ―こういう感想はなぜか抱きません。思うのは、この国のシステムについてのみ。そしてそれ以上に「家族のために」命がけになる人々の姿に圧倒されます。
―瑪瑙の黄色と白色は家長への尊敬と信頼と愛。
今回の葉山は前回以上にアナリストとしての力を発揮しています。しかし、それでも彼の望んだように事態を収拾することはできませんでした。前回同様、失敗だったといえる結果にそれでもただへこたれていることは―チョンが許さなかった。
葉山もたくさんのたんこぶを作りながらも、確実に成長を遂げています。
シリーズ次回作は「パーフェクト・クォーツ」。しかし、残念ながらまだ出ておりません。
ゆえに、次は番外編「夢の中の魚」にチャレンジです。
おまけ:今回はサーシャは全く出ておりません(T_T)