ハーヴァード大の図像学者ラングドンはスイスの科学研究所長から電話を受け、ある紋章についての説明を求められる。紋章は秘密結社<イルミナティ>-17世紀にガリレオが創設した科学者たちの秘密結社-のもので、この世にはもう存在しないはずの伝説の紋章だった。それが男の全裸死体の胸に焼印として押されていたのだという。殺された男は、最近極秘のうちに世界初の大量反物質の生成に成功した科学者。反物質は核の数十倍のエネルギーをもつが、すでに殺人者に盗まれ、密かにヴァチカンに持ち込まれたという・・・。
おりしも、ヴァチカンでは新ローマ教皇選挙会の当日。だが、時期教皇候補4人が揃って失踪していた。そこへ<イルミナティ>を名のる人物から電話がかかる。かつて科学者を迫害した教会に復讐するため、教皇候補を、1時間に1人ずつ殺して死体をさらしていくというのだ。死体をさらす4つの場所とはどこなのか。反物質はヴァチカンのどこにあるのか。その鍵が17世紀に書かれた詩に隠されていることに気付いたラングドンは、知力と体力の限りを尽くして、姿なき敵が仕掛けた殺人ゲームに挑む! 


カバーには大抵その小説のあらすじが書かれているのですが、私も本を読む時には、まずそれを参考にしています。
ということで、まずはこの本『天使と悪魔』のカバーに書かれたあらすじをご紹介。

これだけ読むだけで、かなり興味関心が惹かれます。
キリスト教の秘密結社の存在は、キリスト教に縁のない生活をしている者にとってはほとんど「?」なのですが、その秘密結社に関わる数々の名前を知るにつけ、驚きと強い関心を呼び起こします。今回はそれがフリーメイソンであり、ガリレオであり、ラファエロであり、ベルニーニであり・・・。これらの人物などが行ってきた業績、作品が次々と登場します。
そして、ヴァチカン&ローマ好きにもこれまたたまらない。ただの観光客ならば入れないような内部の様子が描かれているヴァチカン-サンタンジェロ城とヴァチカンを結ぶ秘密の抜け道(パセット)にヴァチカン記録保管所、聖ペテロの墓など。そしてローマ市内の数々の有名な教会や建造物など。もちろんすべてが真実ではないのでしょうが、かなり真実が書かれているそうですから。私もこれを読んでいて、ヴァチカン&ローマにとっても行きたくなりました。
また科学の薀蓄もなかなか興味深いです。『セルンとか反物質の生成とか、何のことやら初めて知ったわ』という私のようなものでは、ここに書かれている科学のことは10分の1も理解できていないと思います。しかし初めて知ったことだらけでも、とても面白く読めました。

でも、何よりもこの小説を面白くしているのは「謎解き」でしょう。
4人の枢機卿がいる場所を特定するためにラングドンが繰り広げる推理。これは<イルミナティ>の啓示の教会へと導く暗号を解く作業でもあったわけです。
4つの元素<土・空気・火・水>を表す場所で、その文字通りの方法で死を与えられる枢機卿。しかもその胸にはその文字のアンビグラム-完全に左右対称に描かれた形-の焼印を押されている。
しかし、捕らわれた枢機卿を助けることだけがこの暗号解読の目的ではなかったわけです。4人の枢機卿を捕らえている男を探し出すこと、これこそが最も重要なことでした。
それはなぜか。
それはこの犯人が『核の数十倍のエネルギーを持つ反物質』をヴァチカンの奥深くに隠し、ヴァチカンの破壊を目論んでいるからでした。
それを見つけ、安全なところへ戻さなければヴァチカンは破滅する。その人民・建物、そして莫大な財産-美術品をはじめとした-が灰燼となってしまうのです。
枢機卿の命とヴァチカンの命-そのタイムリミットが迫っている中で、獅子奮迅の-しかしスーパーマンでは決してない-働きをするラングドンと共に行動するヴィットリア。彼らはとても魅力的です。
しかし魅力的といえば、ヴァチカンのカメルレンゴ(前教皇侍従)が一番でしょう。ヴァチカンに訪れた未曾有の危機に際し、彼が全世界に向けて行った演説はキリスト教徒でない私も祈りをささげたい気持ちになりましたから。誰よりも敬虔な、それこそ神にすべてを捧げたと言い切ってしまえるようなカメルレンゴは、だからこそクライマックスであのような役割を演じることになったのでしょう。

篤すぎる信仰心は是か非か・・・改めてこんなことも考えさせられました。
しかし、科学に宗教、芸術-幅広く書かれた薀蓄の数々。薀蓄好きにはぜひ読んでもらいたい1冊です。